「ねえデンジさん」
「何だ」
「挑戦者のひと、来ませんねえ」
「…」

デンジさんがジムリーダーになってからというもの、このジムは何度も何度も改装を重ねている。一週間ほど前にもまた大規模な工事を行い、その時はジムの電力消費があまりにも激しすぎて、広いナギサシティの全世帯に停電を起こしてしまったくらいだ。
そして改装のせいでジムはまるで迷路と化しており、訪れる挑戦者たちもジムリーダーであるデンジさんのところ、つまりこの、ジム最深部まで簡単に入ってくることができないのだった。

「もう三日も挑戦者が来てないっていうかたどりつけてないじゃないですか。私、ポケモンセンターで悩んでるトレーナーさん、見ましたよ」
「それは行き方を解けない奴が悪い」
「、確かにそれはそうかもしれませんけど、デンジさんもやりすぎです。こないだの苦情だっていっぱい来てるんですからね。ちょっとは自重してください、まったく」
「…この間のことについては、まあ、その」

少しは反省してる、という言葉に、少しじゃだめなんです!と返した。
お友達(本人は違うと否定しているけれど)のオーバさんは奔放な性格のわりにきっちりと四天王の仕事をこなしているっていうのに、根はまじめなはずのデンジさんはどうしてこう、オーバさんとは違ってだめな方向に奔放なんだろうか。
思わずため息をつくと、少しは反省してるんだよ、とデンジさんは繰り返した。

天井からぶら下がるエテボースの尻尾が、ゆらゆらと揺れている。