「…何見てんの」
アニメ。と、は素っ気なく返した。ブラウン管には、絶望した!と連呼する、眼鏡をかけた着物姿の男が映っている。


てか、人が来てる時にアニメとか見んなよな。そう思って言うと、
「あーごめん。でもこれおもしろいから阿部も見た方がいいよ」
(そういう問題じゃねーだろ)思ったもののこれ以上言っても無駄な気がしたから、ため息を一つ吐くだけに留めた。聞こえていたのか「ごめんねー」謝罪の言葉が発せられたが、相変わらず視線は画面から離れない。全然心こもってねーな、と、ぼんやり思う。
(ま、これくらいなら別にいいけどな…)
その辺のクラスメイトなんかにうつつを抜かされるよりは、二次元に萌えているほうがよっぽどましなんだろうと、そう思いこむことにする。高校に入ってから、妥協することが上手くなってしまったように感じるのは、気のせいか?
(気のせいじゃ、ねェよなあ)
三橋やなんかと付き合っていると、誰だって妥協することが多くなるんだろう。(きっと、多分、おそらくは)


「たらららーらーらーらったらー」
ぼうっとしている時にいきなりが歌いだしたので、反射的にびくりと俺の体が震える。
「あべたかやのレベルがあがった!」
そしてあっはっは、と乾いた笑い。こいつは俺の心でも読んでるんだろうか。けれど顔色を窺ってみても、「まといちゃんかわいいわぁ」やっぱりただのオタクにしか見えなかった。