あついよね。そうだね、もう七月だしね。何でこの学校は教室に冷房ついてないんだろうね。きっと市の財政も大変なんだよ。ふーん、そうなんだ。俺にもよくわかんないけど、多分そうなんじゃないかな。栄口って何でも詳しいよね、かっこいいやね。

「そんなことないよ」
そこで照れたように栄口は笑った。頬杖をついたままじーっと見つめていると、「俺の顔、何かついてる?」「ついてないよー」
ただ癒し系の顔だなと思っただけですよ。
そう言ったら、さっきと同じように笑った。そういうとこが癒し系なんですよ。

「栄口はすごい人ですよね」
頬杖をやめて、胸元をぱたぱたとやりながら言った。「そんなことないよ」栄口はまたさっきと同じように、笑って答える。

ていうかなんで敬語なの。なんとなく。なんとなく、かー。なんとなく、ですよ、栄口さん。

無意味な問答だと思ったけれど、無意味な時間を過ごしてるわけではない、と思う。(少なくとも、私にとっては)

栄口って、例えると、天使とかそんな感じだよね。何それ。えんじぇるです。だから、それ意味わかんないって。

栄口が噴き出して、つられて私も笑うのだった。