グラウンドのフェンスを力いっぱい蹴りつけるとがしゃーんと派手な音がして、練習中の野球部員さんたちが一斉にこっちを見た。

「あんた何やってんの」たれ目でかつ目つきの悪い一人の男の子が近づいてきた。他の部員さんたちも、ちらちらとこっちを見ている。(なんだか息苦しい…!)それだけ注目されることをやっちゃったという自覚はあるから、仕方ないんだけどさ。

「ちょっとあんた聞いてる?」
「むしゃくしゃしてやった。反省はしていない」

でも後悔はしてるんだけどね、あははー。ぎこちなく笑うと、その野球少年はさっき以上に胡散臭そうな目つきになった。何やら、まったく信用されてない感じがする。(一応本音なのに)(一応)
ま、しょうがないんだろうけどね。普通の子ならこの反応は至極当然でしょう、きっと。

「練習の邪魔になるし、それにもし壊れたら弁償するのはあんたなんだから、もう二度とやんなよ」
「(うわあこの子見た目通りきっついなー)はい、邪魔してごめんなさい。もうしません」
「…ならいいけど」

じゃあ、と残して少年はグラウンドへと戻っていく。 あの子野球部のくせにあんまりさわやかじゃなかったよなあ、とか、どうでもいいことを思った。