「はどこまでなら許せる?」 こたつに足を突っ込みながら年明け特有のあまりおもしろくない番組をぼんやりと見ていると、向かいで寝そべりながら雑誌を読んでいた田島が、明らかに修飾語の欠けた台詞を発した。 「…何を」 「おれを、だよ」 「俺の、なに」 「そーだなー」 田島は間延びした言葉を吐きながら顔を上げずにこたつの上のリモコンに手を伸ばし、笑えないお笑い番組からサッカー中継へとチャンネルを変えた。はっきり言って正月の特番というのは大しておもしろくなくて、普段このぐらいの時間にやっている子供向けアニメや再放送の古いドラマなんかのほうが、よっぽど楽しめると思う。(思うだけだけど) だから、正直言って田島がチャンネルを変えてくれたのはありがたかった。こたつの中に手を突っ込んでいて、わざわざ出して変えるのが億劫になっていたからだ。(こたつには何がしかの魔力があると私は常々思っている) 「たとえば、おれが浮気したとしたらどーよ」 「浮気してるの?」 「してるわけねーじゃん。おれはひとすじだもん」 「じゃあ訊いても仕方ないでしょうよ」 「そーだなー」 ぱらりと雑誌をめくる音が聞こえて、今週号のサンデーをまだ買っていなかったことを思い出す。年末年始は合併号やら何やらで、毎年買い忘れてしまうことが多いのだ。そしてそのことを思い出し、ふとした疑問にぶち当たった。水曜発売なのに、どうしてサンデーなのだろう。この疑問はサンデーという雑誌を見たことがある人なら誰でも考えることだろうと思うのだけど、しっかりと考えてみたことは一度もなかった。毎日がエブリデイ、もとい日曜日であればいいなという願望からだろうか。今度調べてみよう、と思ったものの、明日には忘れ去ってしまっているだろうとも思った。 「じゃあさー、おれが宿題やんなくて廊下に立たされたりしたら?」 「体罰とか言われて教師がPTAに訴えられるんじゃないの」 「屁理屈ばっか言うなよなー」 「…まあ、別に、許すけど。田島が野球以外には不真面目なのは前からだし」 「は心が広いなー!」 ようやく田島が起き上がった。にかっ、という擬音がぴったりあてはまるような笑顔を作っている。普段ならそんなことは気にもとめないのだけれどなぜだか今はそれがすごく気になってしまい脊髄反射で布団をめくると、何やら奇妙なにおいがした。 「じゃあ、これも、許してくれる?」 私は答えず、くさい、とだけ言った。 |