ガリガリと、かの有名なガリガリしたアイスをかじっていると、それひとくちちょーだい、とクラスメイトの田島くんがすり寄ってきた。そして私の返事はまだだというのに、がぶりとアイスにかじりつく。「つめてー。やっぱ暑いときのアイスはうまいよなー」まあ別にいいんだけどね、アイスの一口くらい。私もそこまでケチじゃない、し。


「あっちーなあ」
手をうちわのようにはたはたとしながら、田島くんは私の隣に座った。
「まさに猛暑、って感じだよね」
この暑さのせいで、私なんて授業を受けるだけで馬鹿みたいに疲れるっていうのに(暑くなくても授業は疲れるんだけどさ)、田島くんには野球部の練習まである。高校球児も大変だよなあ、と他人事のように私は思った。いや、まあ他人事なんですけど。マネージャーであるわけでもないし。
でも野球部のマネジをしているちよちゃんは一応私の友達だから、まったくの他人事ってことも、ないのかな。今日もちよちゃんはグラウンドの草刈りとかしてるんだろうか。
後で何か差し入れしてあげよう、と、思った。


「ていうかたじまくん、練習は?」
ちよちゃんのことを考えていて、ふと気づいた。彼女は今日部活があるらしいから、野球部員である田島くんも、当然練習があるだろう。
「今はちょーど、昼のきゅーけー時間だから!」
「ああ、なるほど」
よく考えると、既に正午を回っているのだった。もうごはん食べたの?そう訊くと元気よく肯定の言葉が返ってくる。
「たじまくんって、暑くてもほんと元気だよね。夏バテとか絶対しなさそうだもん」
「そーか?」
「うん。でも元気なのはいいことだと思うよ」
「そっかー」
言って、田島くんはにししと笑った。